第8球「三塁コーチャー」(2001.3.16)

 信じる人は少ないが、少年時代(中学校)の俺は非常に非力な選手だった。選手も100名を超す神奈川でも有数の強豪チームだったこともあるが、なかなかレギュラーは射止めることができなかった。打球も距離は出ず、セールスポイントはなんと「バント」だった。巨人の川相のような中学2年生というのもあまりにも渋い役どころではある。

 さて、そんな俺が約2年間務めていたのが「三塁コーチャー」だった。相手のサインを盗み、野手の守備位置や、肩の強弱を見極めた上で試合に臨む。だから俺の試合前の仕事は「相手のシートノックを凝視する」ことだった。相手の投手の癖やモーションを観察し守備陣の穴を見つける。そうすることで俺はチームに貢献していたわけだ。

 とかく草野球ではランナーコーチャーは軽視されがちである。人数の関係などやむを得ない部分も有るが、ぜひ意識してほしいポジションである。例えばランナー一塁でバッターがヒットを打ったとする。その時にランナーはどこを見て二塁に留まるか三塁に進むか判断するのか。誰がランナーを本塁に突入させるのか。答えは簡単である。三塁コーチャーである。

 もう一つ三塁コーチャーの重要な役割がある。それはランナーへの確認である。アウトカウントや守備位置を冷静に伝えることでランナーの精神的不安は随分除去される。よく牽制でアウトになるランナーがいるが、あれは結局、全然余裕が無くなっているか、自分でフィールド内を確認しようとして注意散漫になっていることに尽きると思う。それは周りのサポートが不足しているのである。そこを突くのがうまい投手なわけだが。

 好プレーというのは自分だけの力では造れない。周りのサポートであり、声の伝達であり、集中力であり…。それを造る一番の武器はベンチであり、そしてランナーコーチャーなのである。機動力を活かした攻撃が持ち味のTWINSとしては三塁コーチャーの重要性がますます大きくなっていくことと思う。MVPは三塁コーチャーだった試合…なんてのもあってもいいじゃないですか。