第10球「Take Me Out To The Ball Game」(2001.4.3)

 衛星放送やらWOWOWが普及し、何が嬉しいかといえば、メジャーリーグを見ることができるようになったことに尽きる。土曜の朝、試合前にMLBを見てから野球に出かければイメージトレーニングもばっちり…いや二日酔い覚ましに最適である。

 力と力のぶつかり合いという点でMLBは日本のプロ野球を遥かに凌駕している。そういうMLBの魅力はさて置き、試合を見ていてふと思うことがある。それはスタンドの光景である。グローブをはめてはしゃぐ子供たちとそれを見守る父親という光景である。あのマグワイアがセントルイス・カージナルスへの移籍条件として「息子をバットボーイとしてベンチに入れること」を含めていたなんて話を聞かされると、なるほど納得というか、アメリカの家族に対する考え方が何となくわかるような気がする。

 思えば最近、俺の近所の小学校で目にするのは、もっぱら少年サッカーの練習だ。野球少年はどこに行ってしまったのだろうか。キャッチボールをする親子はどこに行ってしまったのだろうか。別にサッカーを悪く言う気は全く無いけれど、もっといえば、サッカーならサッカーで、子供と一緒に走りまわっている父親はどこにいるのだろうか?体が付いて行かない、というのが実状なのではないか。

 親父の投げる球は、いつも速くて自分の胸元にびしっと投げ込まれていた。そして子供の投げる球は山なりで、やっと届くか届かないか、といったところだった。やがて子供が大きくなり、成長することで、徐々に立場が逆転するようになる。父親の球は緩く、時に子供の投げる球速について行けなくなる。その時、父と子のキャッチボールは終わる。実に感慨深いものがある。子供として。高い壁を乗り越えたというか、なんというか。またじきじき自分が小さな壁になることも含めて…。いつかは俺も追い越されるのだろうか…なんて思いながら…。

 野球少年の子を持つ父親は、みんなそんな気持ちなのだろうか。あのマグワイアも、同じなのだろうか。そんなことに想いを馳せると、余計に7回の攻撃前に流れるあの曲“Take Me Out To The Ballgame”が鮮烈に耳に残ってくる。とても優しいメロディだよなぁ…。