第13球「背中」(2001.4.19)

  先日とあるスポーツ番組の中で、あの二宮清純が、阪神タイガースのエースだった村山実へのインタビューについて語っていた。二宮が村山に聞いたのは「エースの条件はなんでしょう?」というものだった。そして村山はこう答えたのだった。「そら、背中ですわ。背中で投げるのがエースですわ」

 要するに、野手は常に投手の背中を見ながら守る。その視線を背中で受けながら、逆に野手を引っ張っていくというのが真のエースなのだ、と。その視線は勝つという「気持ち」であり、ピンチを乗り越えてくれという「願い」であり、テメーきちっと投げろという「叱咤」である。要はそれを背負って投げることができる、これがエースたる者の条件なのだ、と。

 俺は久々に「いい言葉」だなぁと思わされた。制球力でもなく、スピードでもなく、スタミナでもない。俺が解釈すれば、投手に一番大切なものは「野手に対するプライド」なのだ、と。その「プライド」が「背中」で表現されるものなのだ、と。

 TWINSは昨年、一昨年と絶対的なエースがおり、それで好成績を残して来た。エースが来ないと、チームのクオリティががっくり下がる…などという首脳陣の嘆きも多かった。だが、今期はチームとして今一つ、の感がある。それは投手陣の不調というよりむしろ、投げることに対してプライドを高く持てるようなチームであるかどうか…に原因があるのかもしれない。勝ち負け以前にそういうところが問題なのだ、と思う。反論もあるかもしれないが、俺にはそんな思いがある。自分自身の精彩 を欠いている守備を省みつつ。

 守っている我々にできることはただ一つ、「一生懸命守る」ことだけだ。投手にとって、プライドを保って投げつづけることができるのは、バックの視線を背中に感じることである、というならば、我々はもっとその視線をマウンドに投げかけていかなければならない。バックの視線が強ければ強いほど、マウンドにいる投手のプライドは強く刺激されるのだ。

 我々は、厳しくも暖かい視線を投手にぶつけなければならない。投手のプライドに負けない視線を。そして投手はそれに応えなければならない。我々の思いはマウンドに立つ者の背中に届いているのだろうか。

 プレ野球部員である森山君(アーリータイムズ)は「TWINSは投げていて気合の入るチームだ」という感想を俺に残している。昨年のGBN杯東京外大OB戦での一コマである。俺が投げる時もバックに舐められない投球をしていきたいと思う。背中を意識して。