第22球「一本のハ ゙ット」(2001.6.13)

 俺にとって思い入れのある一本のバットがある。あれは大学一年の秋、何度かこのコラムにも書いたがMBCという野球サークルに所属していた時のこと。夏合宿を終え、いよいよ年に一回の明大トーナメント初戦を迎える前日。この明大トーナメントは、関東大学同好会野球選手権(だっけ?)の予選を兼ねたものであり、約30チームの中からたった2チームが代表として本戦に出場できるというもので、当然ながらMBCにとっては最大の野球イベントであった。

 前日一年生だけで練習試合をこなし、例によって明大前駅前の居酒屋で飲みまくっていた。翌日の試合に備えて早々と撤収…するわけもなく、深夜まで飲み続け記憶喪失したまま友人宅で撃沈。その翌日大変なことが発覚した。バットケースが忽然と姿を消したのだ…って酔った勢いで無くしてしまっただけなのだが。そんな事件の報告にたたき起こされた俺はとりあえず先輩に連絡を入れ、同期の親友と共に銀行に行き、ありったけの貯金を下ろしスポーツ店に走ったのだった。

 学生なのでお金も無く何とか3本のバットを購入し、グラウンドに赴くと、主将にお詫びをし、主将から先輩方に説明していただいた後、試合が開始された。結局その試合には圧勝し、バット紛失は不問に伏されたのである。しかも先輩からは「これ足しにしてくれ」と寄付を頂き、俺達の負担は少なからず軽減されたのである。

 最近同好会に入る大学生が減っている、と聞く。したがって存続の危機に瀕している同好会も多く、実際解散している会も少なくないらしい。同好会にせよ、ゼミにせよ、そういう組織というのは学校では教えてくれない、生きていくための術を学ぶ絶好の場だと思うのだが…。

 幸いなことに俺の所属したサークルは紆余曲折がありながら存続しており、しかもそのOBがTWINSに参加してくれていて、その数も徐々に増えてきている。こんなに嬉しいことはない。こういう縁は大切にしていきたいと社会人になってから痛切に思う。

 昨年、現役生がOB合宿を開催してくれた時のこと。俺達が購入したバットが未だに使われていた。俺はそのバットを使い現役生の速球を打ったのだった。結果は詰まったセンターフライだった。次回は振り負けないコンディションで合宿に参加しようと思う。もちろんあのバットで打席に立つつもりだ。