第23球「Try And Error」(2001.6.19)

 多少意訳ぎみではあるが、訳すると「若いうちは失敗できる」という意味の諺である。ポイントはまず「TRY」すること。ここからすべてが始まる、と。我々に当てはめようとすれば、「若いと思っているうちは失敗できる」といったところか。たった3単語の諺だが、いい諺だ、と思う。

 野球は瞬発力のスポーツである、と言われる。打つにせよ守るにせよ走るにせよ、一瞬の動きがすべてを決める。他のスポーツに比べて、持久力や筋力そのものを求められるわけでは無いので、怪我さえしなければ結構年を取ってもプレーできる。だからこそ、「TRY」することを判断し、実行する頭の瞬発力とでもいおうか、そういうセンスが野球には求められる。したがって「TRY」した上での失敗は何の問題も無いのである。そこからは経験という名のセンスが蓄積されるからだ。

 しかし、ただ「TRY」すればいいというものではない。0-3のカウントから難しい変化球に手を出す必要は全く無いし、4番打者の打席でスチールをすることも無い(捕手の肩が弱いとかそういう時はまた別だが)。10点差で勝っていてダイビングキャッチを試みる必要も無いし、三振を取りにシャカリキにコーナーを突くこともあまり重要ではないだろう。言ってみれば「TRY」しないセンスというのも求められるのだ。消極的に聞こえるかもしれないが、これは大切なことだ。状況を冷静に判断というセンスである。

 一番良くないのは失敗したからもうやらない、という考え方である。これは自分の頭で考えていることと実際の体の動きが合致することはない。失敗は悔しいし、惨めな気分になることもある。味方からも叱責されることもあるだろう。でももっと恥ずべきは「TRY」しないことである。その部分は胸を張ってもいいのではないだろうか。たとえ失敗したとしても。こう思うと失敗もちょっと怖くなくなる。それだけでずいぶん楽に野球に取り組めるというものだ。

 我々TWINSは練習試合を「チャレンジマッチ」と銘打っている。なぜこのように呼んでいるのか、俺には何となくわかるような気がする。今回のコラムのテーマがまさにそれにあたる。試合が始まれば勝ち負けに執着するのは当然だが、それと同時に「TRY=チャレンジ」するセンスを磨く場なのだ。それは、大事な試合の大事な場面で、一瞬の差となって現れてくるものなのだ。思い切ったプレーと采配でチャレンジマッチを消化していきたいと思う。「TRY」したいチームの方々、チャレンジマッチしましょう!。