第26球「自然を味方につける」(2001.7.10)

 この時期は体力的に厳しい試合が続く。鬱陶しい雨、高い湿度、ぬかるんだグラウンドコンディション。肉体的にもフィットネスを維持する事も難しくなり、なかなかイメージ通 りの野球ができない、というのが実状ではないだろうか。ドーム球場のような全天候型の球場などではまず試合をすることのない我々ではあるが、公式戦の消化スケジュールも決められており、チームとしても難しい時期であるといえよう。

 そういった天候条件などは、とかく選手の集中力を奪いがちだ。普段ならなんの問題もなく処理できる打球も、ちょっと環境が悪いだけで非常に難しいものとなる。そういう時こそ冷静に守備をすることがとにかく大切になってくる。そうすることで、悪条件の中必死に投げる投手陣を救うことになるのだ。逆に言えば、攻撃する側もイージーな打球となってしまった場合であっても、最後まであきらめないことが大切になることも言うまでもないのだが。  

 ぬかるんだグラウンドでの守備には2つのポイントがある。一点目は打球のバウンドである。土質などもあるので一概には言えないが、おおむね打球は地面を滑るように転がる。具体的に言うと、普段はバウンドすると球速は落ちてくるのだが、この場合あまり球速が落ちてこないで、思ったよりも高いバウンドになることが多い。強い打球になればなるほどその傾向が顕著だ。ちょっと抽象的ですが、イメージ湧きますかね?。このバウンドに対処するためには「ボールを下から見ること」に尽きる。上からボールを見たときに想像以上に高いバウンドになった場合は対処しきれないケースが多い。膝が伸びているため、上下の変化に対応できないのだ。下からボールを見た場合は、膝の動きと手の動きに余裕があり、対処は可能なものとなってくる。「腰を落としてゴロを捕球する」という少年野球から教え込まれてきた鉄則は実はこのような場面でその正しさを思い知らされるのだ。

 もう一点は送球への動きである。踏ん張りが効かせにくい状況で投げるので、特に親指に力を込めていくことが大切になる(第19球参照)のは勿論のこと、ボール自体が濡れているのが一番やっかいだ。濡れたボールは滑りやすく、滑った場合、送球は高く浮く。リスクを回避するためには、まず指先を濡らさないように常にユニフォームで拭いておくことだ。さらに言えば、滑ることを覚悟した上でたたきつけるように低い送球をすることを心がけることだ。ここで特に大事なのは、送球は相手があって行うものであることである。プレーに入る前には、内野外野できちんとそれを確認しあうこと、これが何より大切だ。誰も言わないような状況であれば、是非一声かけてほしい。それだけでずいぶん冷静になれるものなのだ。声の連携は意識の連携であり、プレーの連携であるのだ。

 これだけ心がけてもどうしようもないケースだって勿論ある。ただし、そのワンプレーで試合が決まってしまうのも紛れもない事実である。結果はどうあれ、その環境に合わせて自分のベストプレーをすることが、試合に出場した者の義務であり責任である。それは「自然を味方につける」ことに他ならないのだ。