第29球「熱く冷静に」(2001.8. 2)

 「反省は飲み屋でしろ」TWINSの鉄則である。下を向いて肩を落とす暇があるなら、ミスを取り返すべく次を考えろ、ということだ。わかっちゃいるけど、なかなかできる芸当ではない。しかし、それができなければ、勝利の二文字はつかむことができない。結局どれだけ、平常心でプレーをできるかどうかで勝敗の行方は大きく左右されてしまうのだ。特に同じような力を持っているチーム同士の試合には特にその傾向は顕著になる。

 逆にいいプレーは試合中にどんどん見つけて、盛り上げていくこと、これは非常に大事なことだ。それができなければ、隠れた好プレーを消すことになり、それが守備陣のモチベーションを低下させてしまいかねない。ところがそれをするには、自分のプレーだけでなく、グラウンド全体を見渡して、その隠れた好プレーを見つけださなければならない。これもわかっちゃいるけど、なかなかできる芸当ではない。この二つの要素は選手としての資質の大きなポイントとなっている。特にチームの中心選手であるならばなおさらだ。

 自分が不振の時、味方の好プレーを見つけだすのは非常に難しい。自分の気持ちが後ろ向きになっていることで、周りが見えなくなってしまうというか、余裕が無くなってしまうことに、試合が終わってから気づく。これは俺にとって自分が打てなかったことや、エラーをすることよりも悔いが残るものなのだ。フォアザチームの精神でいるつもりが、いつしか自分のことだけしか考えないプレーになってしまう。この点は大いに反省を行うべきものであろう。

 俺は自分の守備については、好プレーにせよ、凡プレーにせよあまりそれに惑わされることなく、できるだけ淡々とこなすように心がけている。声を出すとか、きびきび動く、とは全く別物なのだ、と考えている。それがいい結果につながっていることを今季強く感じているからだ。しかもそのいい結果は牽制球でのタッチアウトや、挟殺プレー等リスクを負った上でのプレーに現れており、試合の流れを自軍に引き寄せることに一役買っていることも見逃すことはできない。同じように打者によって守備位置を微妙に変えてみたり、前の打席での打球をふまえて守るということも、頭が冷静だからこそできる芸当であり、当然ながら、いい結果につながることが多い。

 冷静さを失った守備陣ほど危険なものはない。コミュニケーションを失った連携プレーほど脆いものはない。そういうことから守備の破綻は起きていく。気持ちは熱くなりつつも、頭は冷静に。そんな微妙なバランスを保ちつつ守備位置についていくことも今後の試合において必要なことであろう。いい結果をもたらすにはそれなりの必然があるのだ。