第30球「星と番場」(2001.8. 2)

 スポ根漫画のの名作に「巨人の星」「侍ジャイアンツ」がある。俺もリアルタイムで接したわけではないが、再放送なんかも頻繁にされていたので何度か見たことがある。最近この漫画を研究した本を見る機会があり、俺は戦力とは何かということを思い知らされたのである。

 両方の漫画とも巨人のV9時代にエースとして君臨する男を主人公にしている。「巨人の星」は大リーグボールでおなじみの星飛雄馬、「侍ジャイアンツ」は番場蛮。共に魔球を操り巨人の勝利に貢献した男である。同じ時期に巨人のエースとして君臨しているのだが、果たしてどちらが真の巨人のエースたる資格があるのか?というのが研究本のテーマであった。そんな本を書き、出版する方もする方だが、本屋で見つけて購入し熟読をする俺というのも、なんだかなぁというところではあるが…。

 研究者の結論は「番場蛮が真のエースである」というものだった。主な理由はこの2つに凝縮される。  1. 星は大リーグボールが打たれると自らファームに落ちたり、挙げ句の果てに失踪したりと、いかなる状況下においてもマウンドを守り結果を出すエースを名乗る資格はない。2. 番場はチームメイト(特に王と長島)に「バンちゃん」と気軽にあだ名で呼ばれているのに対し、星はそういうことは一切無く、チームメイトとの冷えた関係が垣間見える。

 ま、笑える分析ではあるが、意外と草野球チームの中にもこういうものはあるのではないだろうか。草野球の戦力とは、「この試合に出席するメンバー」のことを指す。決して「出場」するメンバーでもなく、ましてや「チームに所属する選手」ではない。従って毎試合チーム戦力は上下動する。これに加え、個々の選手のコンディションなども要素として加わってくるのだから、まさにチーム戦力は水物である。そんな中で欠かさず試合や練習に参加する選手もいて、彼らは戦力として計算できる貴重な存在となる。これこそがチームにとって最も必要な戦力なのだ、といえる。星は自分自身の道を追求する求道者であり、番場は結果的にチームのために投げぬいた。戦力としてはどちらが上か。草野球チームを率いている方なら答えは一つであろう。

 ちなみに番場は魔球の投げすぎでマウンド上で絶命する。星は左の肩を負傷し、一時は再起不能になるものの右投げに変えて「新・巨人の星」で復活を果たす。こんなとこまで対照的な二人であるのだが、諸兄はどっちがお好きですかね?。俺は番場に惹かれるものがありますが。