第42球「教育実習」(2001.10.9)

 俺は実は教員免許を持っている。野球ばかりやっていた大学生活ではあるが、一応目的を持って入学してはいたのである。結局教員の道は辿らず、会社員の道を選んでしまったわけではあるが。教職課程を修了するためには、必ず教育実習を受けなければならない。ご多分に漏れず俺も教育実習を受けた。今回はその時のことを書いてみたい。ちょっと昔の話しになりますが。

 俺が実習に行ったのは神奈川県立多摩高校という県立高校だった。俺の母校である。知った顔の教師もわんさかいるし、補習塾で教えた教え子もいるし、教壇に立つという緊張感からはほど遠い実習であった。しかも実習生は、必ず放課後は部活動に参加しなければならない、という決まり(?)があり、久々にアイボリーの下地に縦文字で「多摩」という文字の縫い込まれたユニフォームを着込み、校庭に降り立ったのだった。実はこれが楽しみだったのだが。

 毎日厳しい練習を積んでいる彼らのグラウンドでの練習は、午後4時から日が沈むまでの短い時間に限られる。その中でどれだけ効率的に練習を行っていくか代々工夫を重ね、色々なメニューをこなしている。最後はシートノックで練習を締めくくるのであるが、レギュラー選手とそうでない選手の差というものがノックをしていると如実に見えてくるのがとてもおもしろい。

 技術的な部分や体力的な部分もさることながら、他の選手がエラーしようと、監督に怒鳴られようと、レギュラーを張る選手は淡々とノックをこなす。ここにその差というものが見えてくるものなのだ。シートノックは守備練習であると共に、試合の流れに乗る練習である、と俺は考えている。どれだけ冷静に守備位置に立つことができるか、周囲の状況を見極めることができるか。ここが一番肝要な部分である。エラーしてカッとする選手や、ノックを受けるだけで精一杯の選手は、レギュラーの道のりは少し遠いなぁ、と思いつつ俺は白球を打ち続けていた。この部分を意識してノックを受けられるかどうかで、その練習が試合で生きるか否かが決まっていくと言っていい。草野球にしても同じことだ。

 それにしても必死に練習する高校生は見ていてとても気持ちいいものである。俺にもこういう時期があったし、今でもそれに少しでも近づけないものかなぁ、と想いながら今週もTWINSに参加するつもりである。

 今年の我が母校は神奈川県大会の三回戦で敗退した。その試合はテレビで中継されていて、俺はずっとその中継を観戦していた。最後の最後に逆転負けを喫したものの、公立高校らしい守備を固めた野球でとてもいい試合だった。試合の流れにしっかりと乗った、しっかりと練習をしているという証のような試合だった。

 なんだか野球をやりに高校に行った、みたいに書いてしまったけど、俺は、教育実習はきちんとこなし、単位もちゃんととりましたので。人によっては結構しんどい実習だけど、大学生活を何気なく過ごすのなら、教職課程の履修をおすすめします。忘れていた何かを思い出すかもしれません。