第45球「もう一つの顔」(2001.10.22)

 プロ野球人気が凋落の一途を辿っていると言われて久しい。高い視聴率を誇ってきた巨人戦も今や数字を取れない番組に成り下がってしまったし、何よりスポーツ新聞の一面を飾ることが極端に少なくなったと感じずにはいられない。しかし、今年は違う。プロ野球界の反撃が始まる。それは「プロ野球マスターリーグ」の開催である。俺はこのリーグをとても楽しみにしている。

 現役を引退し、一昔前なら必ずスタンドにほうり込んだであろう絶好球にみっともないスイングで空振りするかもしれない。豪速球で鳴らした投手が100kmに満たない投球をするかもしれない。見ている我々は失望するかもしれない。が、登録しているメンバーを見てほしい。これを見て「おおっ!」と思える野球人のためにこのリーグは開催されるのだ。長い間野球を見つめてきた者にのみ与えられる特権なのだ。俺はHPを見て思いましたよ。「おおっ!凄ぇ!!」。

 引退後のプロ野球選手の行く道は様々だ。野球に携わるケースもあれば、野球から離れていくケースもある。グラウンドで見せていた勝負師の顔を全く見せなくなった者も多いと思う。若い人の中には、テレビで活躍するタレントが実はその昔プロ野球選手だったことを知らないなんてこともままある。

 俺は、そんな彼らがもう一度「勝負師」の顔を見せてくれるのを本当に楽しみにしているのだ。そういう場を与えられた彼らも幸せ者だと思うのだ。単なるノスタルジックな試合なのではなく、あくまで勝ちに行くという気概がそのHPからは伝わってくる。時代を超えた因縁の対決なんて本当に鳥肌ものだ。

 逆に、そんな「勝負師」達が、寄る年波には勝てず、体が全く動かずみっともないエラーを連発するかもしれない。そして自分の不甲斐ないプレーに苦笑いすることも往々にしてあると思う。非情な勝負の世界の中でしか見ることの無かったプロ野球選手の何とも人間的な面を見ることができるかもしれない、これもまた楽しみのひとつなのだと思う。

 「勝負師」達のそんな「もう一つの顔」を見に、俺はドーム球場に観戦に行きたいなぁと思う。その姿は、俺に野球の本質的な面白さを教えてくれるように思う。俺もこんな野球人になりたいと思わせる何かがあるのではないだろうか。見る前からこんなに興奮してもしょうがないんですが…。全然面白くなかったらどうしよう…。