第52球「審判」(2001.12.7)

 TWINSでは、どんな試合であっても必ず審判を招聘した上で試合を行う。攻撃側が審判を出す、というような取り決めで、中途半端なジャッジをしてしまった場合に、試合自体が成立しなくなってしまうことを危惧しているからだ。

 試合を行う場合に、最も冷静で客観的に選手を見ているのが審判である。選手はある意味審判の掌で踊らされているようなものなのだ。例えばホームベース上ではない塁上でのクロスプレーや微妙なジャッジをする際には、必ずしも正しいジャッジをしているわけではない。審判の立ち位置から見えないものを、ジャッジするわけだから当然なのだ。

 そんな時に「アピールプレー」をするのは絶大な効果をもたらす。審判を騙すわけではない。自分のプレーを正当に評価してもらうのだ。ちゃんとボールを取りました、ちゃんとランナーにタッチしました、ちゃんとホームベースを踏みました、と一つ一つ認めさせていく。微妙なプレーであればプレーであるほど、一つ一つのアピールがモノを言う。そういうプレーを制することで、試合の主導権を握っていくというのはいうまでもない。審判を制するものは試合を制するのだ。

 審判にも色々タイプがあって、ストライクゾーンやジャッジに特徴のある方が多い。極端に言えば、コイツは挨拶しないからクサい球はストライクにしちゃえ、とか一生懸命走っているからセーフにしたろ、なんて思ってしまう審判もいるだろう。人間が審判している以上、少なからずそういう要素は出てくる。それはいわば「審判のアピール」なのだ。俺はこういうジャッジの特徴があります、というような。いち早くそれを掴むこと、これも戦術としては非常に重要だ。

 「この審判は外が広い」。つまり外角のストライクゾーンが広い、ということなのだが、試合の序盤戦において、TWINS上位打線はベンチに帰ると口々に報告をしてくる。バッテリーは当然それを踏まえて配球を組み立てるし、バッターはそれを踏まえて打席に入る。微妙な判定をモノにできないとその精神的なダメージは計り知れない。思い通りのジャッジをしてもらうことは、試合を進める上である意味「味方」になるのだ。

 審判の判定は「絶対」である。「絶対」ではあるが、「完全」ではない。そのグレーな部分がチームの追い風となるか逆風となるかは、実はチーム自身の心構えに拠るところが大きいものなのだ。チェックするのは何も相手選手だけではない。もう一つよく見極めなければならない存在があることに、チームとして気づかなければならないのだ。