第78球「秋の夕日」(2002.7.24)

 俺は実は10年来の競馬ファンでもある。今でこそ野球どっぷりの生活になってしまったので、馬券を購入する機会は減ってしまったけれども、全盛期は足しげく競馬場やウインズに足を運んだものだ。そんな俺がぜひ競馬場で生観戦したいレースがある。それはジャパンカップだ。

 国際招待レースとして名高いこのレースは、外国から強豪馬を呼び寄せ、日本からも一流馬を出走させ戦わせるのだが、それ自体は俺自身にとってあんまり重要なことではない。ワケのわからない外国馬が出てくるこのレースの馬券検討は難しくなるばかりである。実際収支も間違いなくマイナスだ。どれくらい負けているかわからないが、間違いなくマイナスだ。

 俺がこのレースを好むのは理由がある。それは「ウイニングラン」だ。ちょうど11月最終週は午後4時くらいに夕日が赤く染まりだす。ちょうどこのレースが発走となるのが3時45分くらい。レースが終わって勝った馬がたった一頭だけで戻ってくる時、その後ろから穏やかな夕日が、騎手と勝ち馬を包み込むように照らしてくれる。この風景は掛け値無しに美しい。馬券が外れたことを一瞬忘れさせてくれる。

 思えば、秋の大一番で敗れ去った時、いつも夕日が照らしてくれていた。慰めのようでもあり、労いのようでもあり。それでいて、風は冷たく少しずつ寒さが身にしみてくる。惨めであり、悔しくもあり。それでも毎年毎年秋という季節を楽しみにしてシーズンを戦う。茹だるような暑さの夏も、秋の大一番を迎えたい一心で走りつづける。夕日に照らされながら歓喜の輪を創るために。ウイニングランをするために。今年こそは、の想いをこめて。

 今年の秋の夕日は我々にどんな光を照らしてくれるのだろうか。それを想いながら苦しいかもしれないけれども、今の夏を戦おうと思う。秋の大一番を迎えることができるように。