第215球「紐」(2005.6.6)

 先日自分の中で許せない失策を犯した。ショート後方のフライを落球した。ナイターのゲームであり、風も結構吹いた中での試合だったが、落下点には入れていたし、何よりグローブに一旦飛球を納めていた。それなのに、グローブからはじかれるように、落球してしまったのだ。試合も惨敗を喫し、強烈な死球も喰らい、三重苦のような試合であった。

 その日の夜いつものようにグローブの手入れをしていると、気になる点が一つ。それはいつもならグローブの芯にぴたっとボールが入るのだが、それがうまくいかない。グローブの芯は日頃自分自身でグローブの芯で捕球することで、形成されていく。グローブの芯で捕球することを億劫がると、このように手痛いしっぺ返しを喰らうことがままある。そういやぁ、最近パチーン!と乾いた音で捕球できていないよな・・・そんなことを失策を犯した後になって初めて気づくことも多い。でも、普段はきちっと捕球しているよなぁ・・・。と自問自答していると、一つ気付く点があった。

 それは自分のグローブの紐が少し緩んでいたことだ。そうするとグローブの型が少しずつ崩れていくことになる。それは普段はあまり気になることはない。が、一旦グローブに入った打球を落球してみると、物凄くそれが気になる。早速チマチマと紐を引っ張り出すことにした。すると約5cmほどであったが、紐を締めなおすことができた。ぴっと引き締まった感のある我がグローブ。その後グローブにボールを投げてみると、「パチーン!」と入るのだ。芯で取れるのだ。よしよし、これでいい。ここで自分自身の中では気持ちの整理をつけることができたのだった・・・。

 ミスを道具のせいにしてはいけない。その道具が綻んでいたとしても、それは道具のせいではなく、それを扱う選手の問題だからだ。だからこそ、各選手は自分の道具に対して、きちんとしたケアをしておくべきなのだ。当コラムでも「守備時の唯一の味方」と評した自分のグローブをもっともっと大切にしていこうではありませんか・・・。

 次の試合同じようなフライが飛んできた・・・。大事に大事に捕球した。その打球はパチーンと乾いた音を残して、俺のグローブに吸い込まれていった。一つのアウトを取っただけなのだが、俺は無性に嬉しさがこみ上げてきたのだ。紐の緩みは自分の緩みでもあったのだ。改めていい経験をさせてもらった、と思う。