第240球「HOME SWEET HOME」(2006.3.22)

 久々のコラムである。とりあえずモトリークルーの名曲から題名を拝借してみた。ほかのベースが四角形なのに、なぜ、本塁ベースが五角形なのか、という何となく感じていた疑問があって、取り立ててたいしたものでもないので、そのままほっておいたのだが、ふとしたことからその疑問が解けた。なんてことはない。あれは「家」を司ったものだったのだ。

 ある試合で、なかなか点が取れず、じりじりした展開になったことがあった。文字通りホームベースが遠い。そんな中で、たまたま俺が出塁し、次打者の安打で必死に三塁ベースを回り値千金の得点を記録したことがあった。思い切り滑り込み、そのままベンチに駆け込もうとした時に・・・みんなが笑顔で出迎えてくれた。手荒い祝福を付けて。そんな時に俺は「ああ、何だか家に帰ってきたみたいだなぁ」という錯覚に陥る。ホームベースを踏んで帰ってきただけなのに。そのプレーがこんなに暖かい気持ちにさせるなんて。これだから野球は止められない。

 チームは「家」である。住み慣れた家、いるだけで何となく落ち着く家、細部に至るまで自分のこだわりを貫いた自慢の家・・・家にも色々ある。一塁から三塁ベース上はあまりにも周りに敵が多すぎて、心もとないことこの上ない。その中で必死にもがき、必死に前に進み、自分の最も安全な場所を目指していく。走者とはそういうものなのだ。自分の家目指して、一刻も早く、一瞬でも早く。

 「家」だからこそ、そのための犠牲は厭わない。住み慣れた、落ち着く「家」だからこそ、その想いはより強く、重くなっていく。チーム力を測る上で、そういう気持ちが選手個々にあるかどうか、というのは格好の尺度になるだろう。「家」の完成度。「家」の魅力。なかなか住んでいる住人にはわからないところだけど、きっと感じるところがあるはずだ。その感性だけは失わないでいたいなぁ・・・と最近切に思う。

 試合に勝った、負けたというこち以前に、まず我々が意識しなければならないことだ、と思う。
 Tonight tonight I'm on my way Just set me free Home sweet home